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ラルフが出発してからは、寂しさのせいなのか、はたまた陣痛の予兆なのか、ゾフィーはお腹の張りを時々感じるようになった。3日目にはとうとう短い間隔で痛みを感じるようになり、周囲はいよいよ出産だと俄然、騒がしくなった。
酷い風邪が妊婦にうつらないように寝室にほぼ閉じ込められた公爵アルベルトは、孫誕生はまだか、まだかとベッドの中からしょっちゅう尋ねていた。アンゲリカ夫人に初産だったらこのぐらいかかっても当たり前と言われて、ルドルフの時もそうだったかどうかアルベルトは思い出そうとした。だが、当時家のことにあまり関心がなかったせいか、アルベルトは何も思い出せなかった。赤ん坊が生まれても風邪が治るまで会えないと言われ、アルベルトはあまりにがっかりして回復が遅くなりそうだった。
ゾフィーが産室に入ってから10時間以上経っても、出産はまだ終わらなかった。痛みがどんどんひどくなり、あまりの激痛にゾフィーは全身がバラバラになりそうだった。でも限界が来る前に赤ん坊の頭が産道からようやく見えてきた。
「ゾフィー様、赤ちゃんの頭が見えてきましたよ。もうちょっとですからね、頑張って!」
それからまもなくして赤ん坊の大きな泣き声が廊下まで響き渡った。
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