26.忘れ形見の誕生

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「ゾフィー様、かわいい男の子ですよ」 「あぁ、かわいい・・・」 ゾフィーは、自分の産んだ子供の顔を見せられて天にも昇るような気持ちだったが、疲れと痛みで限界だった彼女はその後すぐに意識を手放してしまった。 そこにドタバタと大急ぎでラルフが視察を切り上げて帰ってきた。 「生まれたって?!ゾフィーと赤ん坊は元気か?」 「ラルフ様、静かにしてください。赤ちゃんが泣いてしまいます。それにゾフィー様は疲れて寝ておられるのですよ」 「すまん・・・」 ゾフィーは、汗と涙で髪を顔に張り付かせたまま泥のように眠っていた。 ラルフは赤ん坊の顔を見てから、ゾフィーのベッドの脇に来て彼女の額にそっとキスをした。 「ゾフィー、ありがとう。頑張ったね」 その時、夢の中でまどろんでいたゾフィーは、誰かが彼女にありがとうと言って額にキスしたような気がした。 (ルディ兄様がこの子に会うために来てくれたの?自分の子供が無事に生まれて喜んでくれた?-いいえ、違うわ、この子はルディ兄様が死にたいと思うまで追い詰めてしまった存在だもの・・・でもこのかわいい子をそんな呪われた存在にしちゃいけない!) ゾフィーが夢の中で葛藤していた時、ラルフもまた葛藤していた。生まれた子供は男の子だから、約束に従えば、ゾフィーが望む限り白い結婚を続けてもいいことになる。でもラルフは身も心もゾフィーと本当の夫婦になりたくなっていた。でも、そんなラルフの望みをゾフィーが知れば、仮に白い結婚の継続を望んでいても、優しい彼女のことだから本心を隠してラルフの望みをかなえようとしてしまうに違いなかった。
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