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でも彼女が動揺してしまったのも無理はない。ラルフは結婚前、職場と家の往復だけで女っ気は全くなく、それどころか女性の友人もいないと話していた。なのにその女性とラルフがゾフィーの目には親し気に見えたのだ。ゾフィーは買い物を楽しみにしていた気分が吹っ飛んでもやもやした気分だったが、この気持ちが何なのか自分で説明がつかなかった。
「マイカ、あれはラルフだったわよね?あの隣にいた女性は誰かしら?」
「確かにあれは若旦那様でしたが、隣の女性は知らない方でした。でもただの知り合いかせいぜい昔の友人みたいな感じにお見受けしました」
マイカの目にはラルフと隣にいた女性がそれほど親しいように見えなかったのか、それとも女主人の不安を感じ取って忖度してそう言ったのか、ゾフィーには判断がつかなかった。
「今日は貴族街で何か会合があるって言ってなかったかしら?」
「はい、親しくしている他家の後継ぎの方々と昼食をご一緒になるというご予定があったと伺っております」
昼食の時間はとっくに過ぎていて、長話していなければもう会合は終わっていそうな時間だった。その日、ゾフィーは結局気もそぞろで何も買わずに帰宅した。
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