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30.兄のために
あのシスターアントニア宛の手紙について、ゾフィーが心配していたことは杞憂だった。ラルフは兄ゴットフリートのためにその手紙を書いたのだった。
シスターアントニアは、ノスティツ家が破産する前にゴットフリートと婚約していた。婚約破棄後に彼女は別の男性に嫁いだのだが、去年離婚して聖グィネヴィア修道院に入っていた。
ラルフは、あの日の会合の後にばったり出会った『昔の知り合い』の女性から聞くまでそのことを知らなかった。その知り合いというのは、実はラルフの元婚約者で今は子持ちの人妻レアであった。
ゴットフリートは今も元婚約者のシスターアントニアに未練がありそうだったから、ラルフは兄に彼女の離婚と修道院入りについてすぐに話したが、彼は何日経っても煮え切らなかった。だからお節介とは知りつつも、ラルフは見切り発車でシスターアントニアに手紙を出してしまったのだ。
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