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「きょ…凶器発見しました!」
その声をきっかけに、奥の主人の書斎が騒がしくなった。
ダイニングのテーブルに突っ伏していた私は頭をわずかに持ち上げ、それまで黙々と家の中を動き回っていた、物々しい格好をした一団の動きを確認する。
マスク越しで表情は目だけしか分からないが、一様にホッとした様子なのが見て取れた。
しばらくすると、その一団の中でも一際恰幅の良い、普段から威張ってそうな中年の男性が私の元に歩み寄ってきた。
「奥さん。残念…と言ってはナンですが、ご主人の書斎の机の引き出しの裏側から、血の付いたサバイバルナイフが発見されました。
一応確認願いたいのですが、このサバイバルナイフ、ご主人さんのもので間違いないですか?」
この無骨な刑事、血のついた現物を直接見せるようなことはせず、特徴的な柄の部分だけの写真を見せるといういうデリカシーは持ち合わせていたらしい。
私は一旦大きく深呼吸した後、絞り出すような声で、告げた。
「はい。主人の持ち物に間違いありません」
それを聞いていた別の捜査員が肩の無線機をに向かって大声で叫んだ。
「被疑者宅から凶器を発見!これから鑑識に回します」
その後の捜査員たちの撤収までの様子をぼーっと眺めていた私は、よろよろと立ち上がり、捜査員の中に混じっていた若い女性の警察官を呼び止めた。
「あの…、主人はこれからどうなるんですか?」
尋ねられた若い女性の捜査員は、どこまで答えていいか分からないと言った顔で、他のベテラン捜査員に助けを求めた。
「奥さん。
一応まだご主人さんは
遺体の第一発言者ながら被疑者でもあるという非常にデリケートな立場でして…。
これから慎重に捜査していくことになるんですが、今は何とも言えません。
でも個人的見解ですが、ご主人さんの部屋から凶器が出てしまったとなると…」
話を引き取ったベテラン捜査員もそう言って言葉を濁し、目を逸らした。
そして再び私に向き直ると、申し訳なさそうに付け加えた。
「奥さんも、一応この家の住人ですから、簡単に署でお話を伺うことになります。
今日はもう遅いので、明日の朝一番でご同行願えますか?」
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