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今回のミッションは勝ち確だから!(たぶん
館敷地内の兵舎に着いた。護送兵とはいったん分かれることに。
「さぁいくか。去年の俺たちの補佐に」
「緊張する。うまくできるかな」
「“あそこ”まではうまくいくって分かってるじゃないか」
「まぁそうだけど。それにしても1年前の私たちにしてみたら、それが“補佐”のつもりか!?って言いたくなるよね」
ユウナギは歯を見せて笑った。ナツヒも口角を上げて笑った。
ふたりは1年間、あの時の情報をすり合わせて対策してきた。しかし抜けは多い。やはり緊張感は必要だ。
屋敷の門兵が兵舎の前まで迎えに来た。王女の証書を見せ、これから敵陣へと進入する。
応接室にふたりは通された。兵は門に戻ったようで、今度は侍女がやってくる。その侍女が持つのは例の金庫だ。そこに大事なものを入れて鍵を掛けるよう説明された。
そこでナツヒが模造品である金印の箱を、侍女の前でこれみよがしに見せる。
「あの、そんなふうに見られていると、鍵をかけるのが不安なのですけど」
ユウナギは王女らしく淑やかに言ってみせた。侍女は「すみません、扉の向こうでお待ちします」と慌てて出ていこうとした。
「あの―、川屋行きたいんですけど―」
ナツヒのそれに侍女は、こちらですと慌てて示す。それから彼女はなんとなく彼についていったら、
「男の川屋に付いてくるんですか?」
と言われてしまったので、す、すみません~~と逃げていった。
ユウナギにもあれくらいの奥ゆかしさがあればな、などと考えながらナツヒは、川屋へではなく屋敷門へと抜き足差し足するのだった。
その間、ユウナギは金庫の奥にバネと木板を忍ばせ、それから花含有率の高いよもぎを虫と共に詰め込んでいた。
金庫の鍵を掛けながら、あの時のことを思い出して苦笑いする。そして魔術師から買った薬を使い、扉の向こうに待機していた侍女を眠らせることに成功した。
その侍女を室内に引きずり入れてひとまず待っていたら、気絶した門兵を担いでナツヒが戻ってきた。
「1階の空き部屋を軽く確認してきた。まずこのふたりを隠せる個室に行く」
待ってましたとユウナギは気合を入れて、眠る侍女を持ち上げる。
「魔術師の薬があの帰り道以外で使えたの、初めてだな」
「これ便利ね。手術の時に使うのと似たような薬って聞いたけど、ナツヒはあの時使った?」
「使ってない。使わない方がいいと医師が」
「えっ……大丈夫かな」
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