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ばばあ、というのは我瑠楽のことだろう。威凪刃は意外と口が悪い。しかしようやく香栗は状況を理解した。感謝を伝えに来た威凪刃が、我瑠楽の無茶な難題を聞き、自分も手を貸すと勝手に決めた、ということのようだ。
「でも、いいの? 教授からの課題は、時間がかかるものだと思うけれど」
「ご安心ください。元々、数日は滞在するつもりでいましたし、今から手紙を送れば、家族は納得してくれるでしょう」
ずいぶん理解のある家庭だ。食事を再開する威凪刃を見ながら、香栗は思考する。やがて、結論が出た。今は威凪刃に頼るしかない。
「それじゃあ……お言葉に甘えてもいいかな」
ステーキの最後の一切れを噛み、飲み込む威凪刃。ソースの付いた口元を上げて、手を差し出す。
「もちろんです」
香栗は威凪刃の手を握った。威凪刃の実力はまだわからないが、強靱丸の適正があるのなら、少なくとも威凪刃自身の安全は保証できる。
「ふふ。口に、ソースが付いているよ」
「いけません、香栗様。ソースを舐め取るなど、は、はしたないです!」
「そんなことするなんて、一言も言ってないのだけれど」
大丈夫かな。少し不安になる香栗だった。
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