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☆
がたがたと揺れていた荷馬車が、急に止まる。揺れが無いことが、逆に香栗を眠りから覚醒させた。
「う……ん」
「おはようございます。香栗様」
「おはよう……」
むくりと起き上がり、まぶたをこする。そうだ。今日は宿に泊まるのだった。
「今は、どの辺だろう」
「着きましたよ」
そんなに寝ていたのか。寝ぼけた眼で、威凪刃に勧められるまま荷馬車から降りると、紅葉が地面に落ちているのが見えた。視界がはっきりとしてくる。夕暮れの日差しに照らされた、赤と黄の木々が出迎えた。香栗は数秒、見とれる。
「ここから少し歩きますが、大丈夫そうですか?」
「あ、うん。眠ったおかげで体力も回復した気がするよ」
「良かったです。では行きましょう」
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