第三話

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 「ただ、香栗様は優秀と聞いています。他の道に進む、という選択も何もおかしくない、と言いますか」  「ああ。そういうこと」  「理由があるのでしょうか」  「あるよ」  湯の水面を眺める香栗。威凪刃は、さぞ高尚な理由があるのだろう、と勝手に香栗を高く評価する。が、香栗は「大した理由じゃないんだけどね」と前置きしてから、話を始める。  「わたしのせいで、あやかしが死んだの」  「えっ?」  「そのあやかしは、穏やかで、温厚な生態を持っているの。でもあやかしと触れ合える園で、わたしが近寄ったその時は何故か好戦的で。わたしの身を案じて、近くにいた管理者が止めに入って、結果的に処分された」  香栗は夜空を見上げる。その時のことを思い返しているようだった。
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