第四話

3/12
前へ
/45ページ
次へ
 後ろから声をかけられた。香栗が振り返る前に、威凪刃が殺意を込めた瞳で、睨み付ける。酒に溺れたかのような赤い髪の女性だった。  「なんだ、貴様。香栗様に気安く声をかけるな」  威凪刃の発言に、目を丸くした女性は、豪快に笑い出した。  「あっはっは! そりゃないよ。これからあんたらを案内しなきゃいけないのに。つれないなあ」  「えっ。ということは……?」  「まさか、貴様が」  「そうそう。案内人の夜栄(やえい)だよ。よろしくね~」  げへへ、と笑いながら、夜栄は威凪刃と肩を組む。  「酒臭っ」  「へへ。そう拒絶するなよ~。そっちのお嬢ちゃんも、身構えなくていいから」  「は、はあ……」  ピースしながら、夜栄が笑うと、香栗の鼻にも酒の臭いが届いた。この人が案内人。果たして大丈夫だろうか。一抹の不安を香栗は覚えた。  「それじゃあ、少し山に登るよ。二人とも、付いてきて」  「は、はいっ」  「大丈夫なんだろうな」
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加