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☆
赤い紅葉が茂る山。そのなだらかな坂を上る三人だったが、香栗が早速、疲労を見せ始めた。荷物は主に威凪刃が背負っている。香栗は少量の荷物が入った鞄を背負っているだけ。しかし、やはり体力の無さが現れていた。先頭を歩く夜栄が振り返る。
「大丈夫かーい?」
「は、はい。平気、です」
「香栗様。少し休憩しましょうか?」
香栗は首を横に振る。
「もうすぐ着くらしいし、大丈夫。それに、これくらいで根を上げていちゃダメだと思うから」
「……わかりました。無理はなさらないでください。何かあれば、遠慮せずにこの威凪刃にお申し付けください」
「うん。ありがとう」
心配させないように、作り笑いを見せる香栗。威凪刃にもそれは理解できた。が、あえてそのことは口にしなかった。歩を進める。
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