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やがて、歩いていると、道の脇にある茂みがガサガサと音を立てた。威凪刃が警戒して、香栗と茂みの間に割って入るように立つ。それから腰の刀に手をやった。
「ん。こいつは」
と、威凪刃はそれの姿を確認した。すると、夜栄が口を開いた。
「そいつが、あんたらのお目当てであるキノスアラシだ」
苔にも似た、抹茶と黒の毛並みを持つ、狸のようなあやかし。大きさは通常の狸よりも一回りほど大きい印象を香栗は持った。潤んだような瞳を見せるキノスアラシに、疲弊していた身体が癒やされた気がした。
「これが、キノスアラシ……」
触れたい。香栗は、思わずそっと近寄ろうとする。しかし、威凪刃が手で制止した。
「いけません。凶暴化の話もあります。去るのを待ちましょう」
「わ、わかった」
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