第四話

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 ☆  しばらく獣道を歩くと、低い崖があった。崖の先には大きな樹が目立つように生えている。まるで天まで伸びていそうだ。  「香栗様」  威凪刃は香栗に囁く。香栗は頷いた。おそらく、ここが目的の場所。香栗たちの視界には、少なくとも五体のキノスアラシが映っていた。じゃれ合うキノスアラシを眺めていると、後ろを歩いていた夜栄が訊ねる。  「どうするんだい? このまま近づくか。あるいは隠れて観察するか」  「時間はありますよね。なら、観察します」  「逃げられるかもしれないよ?」  「捕まえるのは、別の人でもできると思うので」  意外な言葉だった。自分にしかできないこと。自分の立ち回りを理解しているかのような発言だ。夜栄は、香栗を少し気に入り始めていた。  「そうかい。じゃあ、隠れないとね」
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