第四話

9/12
前へ
/45ページ
次へ
 威凪刃が香栗を背負うと、斜面を滑るように降りていく。事前に強靱丸を摂ったこともあり、動きは軽やかだ。香栗を背中から降ろしていると、後に続くように夜栄も斜面を下る。斜面に生えている木々を掴んでバランスを整え、勢いを殺してゆっくりと降りてきた。  「ふう。正直、口だけかと思っていたよ。やるね、君」  「これくらいのことがこなせないようでは、香栗様を守ることなど夢のまた夢だ」  「どんだけだよ。自分に厳しいというか、目標設定おかしくない?」  「おかしくない」  「あはは……それじゃあ、調べましょうか」  それから三人は周辺を調べ始めた。香栗は特に、キノスアラシが噛みついていた樹を重点的に調べる。頬や服に土が付いても気にする様子はない。土で汚れている香栗を見た威凪刃が声をかけようとした。しかし、そばにいた夜栄が威凪刃の肩を叩き、首を横に振った。好きにさせるべきか。威凪刃も納得して、香栗を見つめる。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加