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「そういえば、このでかい樹はなんて言うんだ?」
「シシズク。紫色の雫を垂らすことがあるんだ」
「変わった樹だな」
「そりゃあ、ね。これは幻想植物学に分類されているし。まあ、最近じゃあ、当たり前のように伐採されることが多くて、幻想感も無いんだけどねー」
「幻想植物学……」
桜寿の顔が浮かんだ。憎らしい。仏頂面になる威凪刃を見た夜栄は、不思議そうな顔をした。
「あれ?」
「どうした、お嬢ちゃん」
シシズクの根に近い箇所に、顔をうずめるように近づけていた香栗がある物を発見した。夜栄が近寄る気配を感じた香栗は、シシズクから離れ、振り返る。
「この白いのは、なんでしょう?」
「どれどれ」
シシズクの太い根。腰を低くした夜栄は、香栗の指差す所を見る。ああ、あれか。夜栄は説明し始めた。
「アワヒカルの出した液が固まった物だね」
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