第一話

4/10
前へ
/45ページ
次へ
 「キノスアラシ、ですか」  「無理だと言うなら、これ以上、この件について君と話すことはない」  「そう、ですか……」  キノスアラシはたぬきに似たあやかしで、謎の凶暴化が進んでいる。この事はしばしば問題になっていた。この謎を解き明かせば、賞を授与されるほどの社会的貢献になるだろう。  しかし、か弱い香栗には、とてもこなせる課題ではない。そのことは香栗自身が理解していた。  それでも……。  「わかりました」  「わかった、だと? まさか」  「調べてきます」  死ぬつもりか。と、我瑠楽が口にしようとしたその時、部屋の扉が勢いよく開いた。  「話は聞かせてもらった!!」  振り返る香栗。扉付近には、ポニーテールにした黒髪の少女が立っていた。腰には剣と思われる武器が差してある。黒髪の少女は、香栗と同じくらいの年齢に見える。少女は凜とした表情で、ずかずかと部屋に足を踏み入れた。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加