第五話

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 数ヶ月後。思染学園では香栗は有名人のような扱いを受けていた。廊下で生徒とすれ違うと尊敬の眼差しを向けられる。非力なはずの香栗が、あやかし学へ進むことを許可されたからだ。香栗は先ほど受け取った、証明書が入った小筒を手に持つ。  「なんだか、気恥ずかしい」  「何を言っているのですか、香栗様。これは当然のことです」  隣を歩く威凪刃が鼻を鳴らすと、桜寿が向こうから歩いてくるのが見えた。香栗は桜寿に声をかける。  「桜寿さん」  「なんですの?」  「お礼を言おうと思って。あやかし学に進めるのは、幻想植物学に詳しい桜寿さんが助言してくれたおかげでもあるから」  「ふん。別にわたくしは何も。あなたの仮説があってこその結果でしたから」  香栗の新たな仮説。それはアワヒカルが出す白い物質の減少が、キノスアラシの凶暴化に繋がっているのではないか、というものだった。
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