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なんだか意外だ。桜寿は自分のことをあまり好ましく思っていないのだ、と香栗は感じていた。威凪刃がからかいの言葉をかける。
「なんだ、貴様。まさか香栗様に気があるのか?」
くっくっ、と笑う威凪刃。が、桜寿が目を逸らし「ちがっ」と再び言葉に詰まる様子を見て、青ざめる。
「貴様、そうなのか。え、嘘だろう?」
「だから、違うと言っているでしょう!」
「いや、だが。その反応は」
「とにかく! そのうち声をかけますから、そのつもりで」
小走りで去る桜寿を眺め、威凪刃は「まったく」と呆れる。それから香栗の顔を見ると、香栗は、心ここにあらず、といった表情をしていた。
「香栗様!?」
「桜寿さんが、わたしに……」
「お気を確かに!」
威凪刃は香栗の肩を掴み、揺する。しばらくの間、講義の話が頭に入ってこない香栗だった。
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