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深々と頭を下げる威凪刃。
「本当にその節はありがとうございます」
「ああ……。そういうこと、ですか」
思わず敬語に戻る。つまり、良い暮らしをできるのも全て香栗の父のおかげ。その恩返しをするために、香栗に会いに来た、というわけだ、と香栗は理解した。
「ん?」
と、威凪刃は不思議がる。しかし、すぐに俯く香栗の心情を察したのだろう。威凪刃はぶんぶんと首を横に振る。
「失礼いたしました! 違うのです。私は、ただ個人的に香栗様に救われたから、あなたの元に訪れたのです!」
「どういう、こと……?」
「やはり、覚えておられないのですね」
もしや、喉を詰まらせたのは、自分が威凪刃を覚えてなかったから、なのだろうか。だとしたら、自分の方がよほど失礼ではないか、と香栗は自分を恥じた。威凪刃は話を進める。
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