第1章 奈落へ

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第1章 奈落へ

 1ー1 青の世界  青だ。  目覚めたとき、俺の目に飛び込んできたのは、青い世界だった。  それがなんだかきれいで。  俺は、こんなふうにして死んでいくのかなとか思ってしまったんだ。  だけど。  俺は、ぶわっと呼吸を取り戻す。  青い世界は、それと同時にぐるりと回転を始める。  逆さまになった空を見ながら俺は、落ちていくのを感じていた。  ここは、どこだ?  俺は、誰なんだ?  俺の脳裏を過去が駆け巡る。  それは、ありえない思い出で俺は、思わず呼吸がまた止まりかけるのを感じていた。  呼吸をしろ!  誰かの声がきこえて俺は、慌てて息を吸い込んだ。  はっはっと小刻みな呼吸をしながら俺は、頭を回転させようとして必死になっていた。  その間にも俺の体はすごい勢いで落ちていく。  目の前に赤茶色の大地が広がっているのが見える。  このままだと衝突する!  そう思ったとき、俺の背中の筋肉がひきつるように動いた。  背中の巨大な筋肉の塊が動いて空気をかく。  気流が逆転していく。  俺の落ちていく肉体がふわりと空中で停止する。  なんだ?  これは!  俺は、空中で止まっていた。  いや!  俺は、空を飛んでいるんだ!  俺は、背中の筋肉をほぼ無意識に動かしながら辺りを見回した。  遠くに巨大な翼を持った恐竜のようなものが群れで飛んでいる?  ここは、どこなんだ?  俺が一人答えを探っているとふいに誰かの声がよみがえった。  「ロイド」  声は、うっすらと笑いを含んでいた。  「あなたは、立派よ。ロイド。国のために全てを捨ててつくすんだもの、素晴らしいわ!」  それは、若い女の声で俺には、それが婚約者であるロウラン・サトラスの声だとわかった。  それは、俺が国のドラグーン騎兵隊に入隊することが決まった日のことだった。  最後に会った時、ロウランは、泣きながら俺を褒め称えたのだ。  そうだ。  俺は。  俺の名前は、ロイド。  ロイド・ライゼンバーグ。  俺は、自分の鋭い爪のはえた手を見つめた。  なぜ、こんなことになった?  俺の両腕は、黒くて固い鱗におおわれていた。  どういうことだ?  俺は、強く思った。  思い出せ!  はやく!  はやく、思い出すんだ!  そのとき、何かの扉が開くのを感じた。  ここではないどこかの記憶が頭を駆け巡った。  巨大な尖塔がいくつも立ち並んだ、あれは、街だろうか?  鋼鉄の箱が地面を走り、人々は見たことのない服装をしていた。  なんだ?  この記憶は?  俺は、頭を押さえた。  激痛が走る。  俺は、息が止まりかかるのをなんとか呼吸を続けようとする。  そうだ!  俺は、自分が浮かんでいる空の果てを見上げた。  あの場所には、こんな美しい空はなかった。  俺は。  なぜ、ここにいるんだ?
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