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「初めまして、宜しくお願いします。なんだか緊張しますね。」
南野さんは軽く会釈するとニコッと微笑む。
「どうも、高野です。そうですね。」
彼女は、とても愛想が良かった。
きっと一般的には美人と言える容姿だろう。僕の無愛想な挨拶は彼女にどう映ったかは何となく想像出来る。
「南野さん。」
「はい、何でしょうか。」
「僕はアナタに謝らなければならない。」
「謝る?何処でお会いした事がありましたか?」
彼女は、初対面の男からの突然の謝罪に当然の様に首を傾げる。
身に覚えの無い謝罪など逆に不安を与える様なものだ。
「いえ。恐らく初対面だと思います。」
「では、何についての謝罪何でしょう。」
僕は彼女に、ここへ来た事は本意では無く他者から強引に参加させられた事を伝えた。
両親からの圧力に負けて参加した事を。
「なので、皆さんと同じ様に本気で恋人を見つけに来た訳では無いんです。本当にごめんなさい。アナタの貴重な時間を無駄遣いしてしまいました。」
僕は事前に用意した言葉をなるべく気持ちを込め彼女へ伝えた。
「ふふっ。」
彼女は、品良く口元に手を添えるとクスクスと笑いを堪える様な素振りを見せた。
(何処か説明に変な所があっただろうか。)
「あ、あの何か面白い事でもありましたか?」
すると彼女はまたニコッと笑みを浮かべるとこう言った。
「いえ、私も同じ境遇で参加したもので、つい。」
なんと。
「南野さんも、自ら参加なされた訳では無いと?」
彼女はコクっと頷く。
「ええ。両親から急かされまして。当然、そんな事は黙っておこうと思っておりましたが、まさか始まって早々に同じ境遇がいらっしゃるとは。しかも打ち明けられるとは。」
「そうでしたか。」
「はい。でも少し気が変わってきました。」
「・・そうですか。」
「高野さんも、せっかくですしこの場楽しんでみては如何です?」
彼女はまた、はにかんだ。
(楽しむ。)
「いえ、私には心に決めた人が居ますので。」
「心に決めた人ですか?」
「はい。」
「お付き合いされているんですか?」
「どうでしょう。必ずまた会おうって約束をしたんです。」
「約束ですか。」
「はい。」
彼女は目を煌かせながら両手で祈る様に組んで、「何だかそれ、凄いロマンチックですね。」と熱い視線を僕に向けてくる。
「ロマンチックですか、、。そんな良いモノじゃありませんよ。」
「私、その馴れ初め凄く気になります。」
僕自身、初対面にここまで話すつもりは無かったが
何だろう。場の雰囲気当てられてしまったのか、話すのも嫌じゃ無い気にがしていた。
「長いですよ?」
「はい。大丈夫です。今私、高野さんがどんな人か気になっているんです。」
これは好意と受け取って良いのか良くわからないが、どの道僕と言う人間を知ってもらうには避けては通れない道だ。
これを聞いてまだ、その好意を保ち続けてくれるのならあるいは・・。
「分かりました。それではお話致します。」
「はい。」
僕は当時の記憶を、常に心の浅い所に仕舞ってある思い出をなるべく鮮明に気持ちを込めて彼女へ伝えた。
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