第78話未来へ~皇帝side~

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第78話未来へ~皇帝side~

 私の(ブリリアント)は可愛い。  怒る顔さえも愛らしい。油断すると頬が緩んでしまう程だ。  最初に惹かれたのは、その才能だった。  彼女自身さえも気付いていなかった頃から、私は彼女を密かに注目していた。発想が独創的でユニークだった。環境さえ整えば、彼女は何処までも躍進すると思った。案の定、数年後に芽を出した時は「やはりな」と笑ってしまった。  アダマント王国のユリウス王太子との婚約。  それを知った時は出遅れた事を心底後悔した。  曰く付きの側妃の息子。  出自が非常に怪しい王子。  まさか彼を王太子にすると帝国は考えなかった。  帝国の考えではシャイン公爵がいずれは王位につくと考えていた。臣下に降りたとはいえ、王弟だ。その容姿、才覚、どれをとっても次の国王に相応しい。彼が辞退してもブリリアントがいる。才能だけでなく血筋においても申し分ない。  ユリウス王子が立太子した時は、帝国の重鎮達も開いた口が塞がらなかった。  二人が婚約して暫くすると上手くいっていないという噂が耳に届いた。帝国としては、ブリリアントが王太子の妻となり王妃となるのは本音としては反対だった。彼女の才能を潰しかねない王家に嫁がせる事に反対だったのだ。だが、当の本人達は不仲だと言うではないか。つけ入るチャンスはあると思った。  礼を言おう。  ブリリアントを手放してくれて。  ありがとうと。  頭は悪くないが致命的なまでに自分の立場を理解出来ていなかった男の敗因だろう。いいや。彼は自分が負けた事すら理解していないかもしれない。だから、ブリリアントを手放す結果になった。母親の教育の賜物か。王族の義務を理解していなかった。思考が平民や下位貴族に近い物だった。そんな男に王たる資格は無い。  今は男爵か……。  その地位なら上手くいくだろう。  昔のような妙なプライドが薄れている分、周囲との摩擦も少なくなるだろう。  私は、男爵(ユリウス)の新しい門出を心から祝おう。
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