受胎告知の日

1/3
前へ
/15ページ
次へ

受胎告知の日

「妊娠?」 聖コントリビュート研究病院に赴いた白波瀬(しらはせ)(かおる)の担当医である桜庭(さくらば)から告げられた『妊娠反応の陽性』に併せ、『品胎(ひんたい)』という言葉に怪訝な顔をした。 薫は自身の妊娠について知っていたので、番である白波瀬が驚く姿を楽しみに、また可笑しく見守っていたのだが、妊娠の一言も然ることながら、品胎がいわゆる多胎である説明を受けてからも、気難し気な表情から別段の変化を見せなかった。 番となって間もない事であったから、薫は『白波瀬の思い描く時期と異なったのだろうか』、或いは『そもそも子を望んではいなかったのだろうか』などと勝手に思ったのだが、しかしそれにしては、 「細身の薫に三つ子の出産を乗り越えることは可能か」 だとか、 「日常生活に於いて特に注意すべき点」 など、的を得た質問を次々と桜庭に投げかけている。 「出産に関しては概ね大丈夫でしよう、彼の生殖機能はアニムス系の特殊な構造をしていますから」 が、これについても白波瀬は言葉で不満を呈した。 「概ねなどという不確かなものでは駄目だ。 今後君を専属医に指定する。 異常がないか常に管理しろ。 生活配慮に関してはこちらで整える」 席を立ち、慎重に薫をエスコートをするものの、それでも硬い表情を崩さないまま帰路についた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

66人が本棚に入れています
本棚に追加