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東野邸にて、
「最近俺、柏木さんとよく行くすき焼き屋さんで京都出身の女将にやたら褒められるんだよねー。
でもさ、その褒められる意味がよく分かんなくて」
「褒められるやて?
まさか汰くん、意味分からんとまんま受け止めて喜んでるんと違うやろな」
「だめなの?
あ、京都の人が話す言葉って裏の意味があったりするからでしょ?
けどあの優しい女将に限って、そんなことないと思うけどなぁ」
「優しい女将なんて胡散臭い」
「そうか、ユキさんなら京都人がする会話の意図が分かるもんね?
じゃ俺が言われたことにどんな意味があるのか謎解きしてよ」
「いやぁ、僕に分かるかいな。
京都のいけず言葉なんて」
「すでに『いけず』って言ってる」
「あははは、、、堪忍堪忍。
取り敢えず言うとぉみ、汰くん何言われたん」
「先ず店行ったでしょ?
で、座敷に上がり込むなり、
『汰士さんはいつも元気よろしおすなぁ、男の子ぉは元気なんが一番や』って」
「それは、
『バタバタ音立てて歩くな』だ」
「その日急に柏木さんから誘われて俺は普段着だったんだよね。けど、
『まあぁ、ええ服着てはりますなぁ。
それで? 今日は隅田川でも泳いできはったんですか?』なんて言うし」
「『汚い格好でうちとこの店来るな、もうちょっとマシにして来い』」
「そこのすき焼き屋さんは都内では珍しい京町家で、建築を勉強してる俺としては建物の造りを語らずにいられなかったわけ。
そしたら、
『さすが、詳しおすなぁ。
けどうち建築のことはよう分からしませんねん。
後で柏木様によおよお説明してもらいましょ』て」
「『お前の講釈話には興味ないねん、
それより柏木さんともっと話しさせろ』ってとこだな」
「、、、全部悪口じゃん」
「悪口とちがう、いけずや。
そこの女将はきっと柏木さんのこと好いてるんやろ。
せやし汰君が気に入らない」
「だからってさ、、、
あれ? ちょっとゆきさん、どこ行くの?」
「いけずにはいけず、や。
汰くんコケにされて黙ってられへん。
今夜はその店行ってすき焼き食べよ。
ほら、汰くんも来っ」
「いや、、、黙ってられないって、、、
一体何すんだよ、ゆきさん?」
「いけず倍にしてきっちり返したるんや」
「いいよ、そんなことしたら余計ややこしくなるからさ。
ね、止めてよ、ゆきさん。
ちょっとゆきさんたらっ」
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