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受胎告知の日
「妊娠?」
聖コントリビュート研究病院に赴いた白波瀬は薫の担当医である桜庭から告げられた『妊娠反応の陽性』に併せ、『品胎』という言葉に怪訝な顔をした。
薫は自身の妊娠について知っていたので、番である白波瀬が驚く姿を楽しみに、また可笑しく見守っていたのだが、妊娠の一言も然ることながら、品胎がいわゆる多胎である説明を受けてからも、気難し気な表情から別段の変化を見せなかった。
番となって間もない事であったから、薫は『白波瀬の思い描く時期と異なったのだろうか』、或いは『そもそも子を望んではいなかったのだろうか』などと勝手に思ったのだが、しかしそれにしては、
「細身の薫に三つ子の出産を乗り越えることは可能か」
だとか、
「日常生活に於いて特に注意すべき点」
など、的を得た質問を次々と桜庭に投げかけている。
「出産に関しては概ね大丈夫でしよう、彼の生殖機能はアニムス系の特殊な構造をしていますから」
が、これについても白波瀬は言葉で不満を呈した。
「概ねなどという不確かなものでは駄目だ。
今後君を専属医に指定する。
異常がないか常に管理しろ。
生活配慮に関してはこちらで整える」
席を立ち、慎重に薫をエスコートをするものの、それでも硬い表情を崩さないまま帰路についた。
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