それからの彼ら

Ｉｆ物語

「火使ってるから今はもう暖かいよ」

たった今帰ってきた結城さんの方が断然冷え切っているのに。

付き合い始めの頃から変わらない。

「帰ったら先ずストーブ点けろって言ってるだろが。
俺の大事なケツ冷やすな」

「大事はケツだけかよっ」

コミュニケーション能力も性格もパーフェクトじゃないけれど、俺が人生の中でしんどい場面に遭ったら結城さんは、

『辛い』って言う前に『辛かっただろ』って言ってくれる。

だからね、毎日起こる些細なこと、人生やってたら時々起こる大変な出来事も、来るなら来てみろって気になれるんだよね。

結城さんとなら手を取って一緒に乗り越えられる自信しかない、って。

たった一言でそんな風に思わせてくれる、俺にとって唯一の人なんだ。