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Verseauより
─ 理央、怜央、静琉が生まれる前の出来事
───
「先日から変わった草刈り機が置いてあるな。
最新のタイプか?」
仕事から戻った際、白波瀬は袋に包まれた三台のベビーカーを横目で見て通り過ぎ、湯浅に訊いた。
「え?
あ、、ああ、袋を掛けたままでしたからお分かりにならなかったのですね。
あれは、、、」
「庭で使う物をいつまでもエントランスに置いておくな。
きちんと小屋に収納するよう庭師に伝えておけ」
「いえ、そうではなく」
「それはさておき、最近薫がサンルームにあるベッドの上に私の衣類や小物を積み上げ、昼寝をしてるようだ。
それ自体はオメガ特有の性質だと理解している上、私としても嬉しいことだが、、、別段の問題はないんだろうな」
「はい、ございません。
つまりですね、薫様は、、、」
「ならいい。
ああそうだ、それよりもっと重要な話があった」
「何でしょう」
「先日部屋に見慣れないサポーターのようなものがあった。
大きさ的には、、、そうだな、ウエストを締めるくらいのものだ。
しかし薫が着けるには大きいとも思える。
そこで『これは何に使うのか』と訊いたんだが、あいつは声なく笑うだけで。
いや、実は腹でも冷えて辛いのではないだろうか。
お前、何も聞いてないか?」
「社長こそ何も伺ってはいないのですか?」
「あいつは私に心配かけまいと秘密主義になるところがあるからな」
「何を仰います。
薫様は先週桜庭医師のところへ行かれたではありませんか」
「ああ。何やら腹回りに塗るクリームを処方されたとか。
とすると冷えではなく痛み止めの可能性も考えられるな。
薫が言わないなら早速桜庭に確認してみよう」
「あのですね、社長。
そこまでアピールされて、さすがにわからないのはいかがなものかと」
「全くだ。原因も特定せずクリームごときを処方する医師など言語道断だ」
「違います。
薫様が処方されたのはですね、ストレッチマークを予防す、、、」
「痛み止めと言えば、ここ数日は激しいセックスを嫌がることが多くなっ、、、。
ハッ、、、まさか」
「やっとおわかりになりましたか」
「腰痛かっ」
「違いますっっ」
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