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夢だと思えば、相手が初対面だろうと怖がることはない。わたしが話の先をうながすと、男はやれやれという風に苦笑しながらため息を一つした。
「マシロは本当にマイペースな子なんだねえ。まあそれならそうと、話が早い。この鍵を使いなさい」
男はまるで宝物を扱うかのように、両手で大事そうに美しい銀の鍵を差し出してくる。
普段なら知らない人から物を貰うなんてぜーったいにしないんだけど、これは夢だからまあいいか。
それに、なぜだろう? 妙にその鍵が気になって受け取らずにはいられない。
「……きれい。おとぎ話の絵本で見た鍵みたい」
「ふふ、その鍵は見た目が優れているだけじゃなくて、素晴らしい力を持っているんだよ。ワタシの後ろにある扉を見てごらん」
男の指さすほうを見れば、確かに一つの両開きの扉だけがあった。混乱していて気づかなかったけど、なんで壁も何もないところに扉だけが立ててあるんだろう?
あやしい……あやしいけれど、その扉に魔法でもかかっているのかな。
「不思議とあけたくなっちゃう!」
「素晴らしい、そうこなくてはね! そんなやる気いっぱいのきみには、さらに渡す物があるんだ。はい、これ」
そう言って男は、今度は真っ白な本を手渡してくる。すごーい、学校の図書室でも見たことのない立派な装丁の本。
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