復讐鬼疑似体験ゲーム③

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復讐鬼疑似体験ゲーム③

 寝室に入ると、ライオンはダンスミュージックに合わせて体をくねらせながらご機嫌な状態でダンスをしていた。 「もう大丈夫なのか?」  カメは困惑しながら訊いた。 「カメさんが塗ってくれた薬草のお陰で完全回復しました。すっかり元気ですよ!」  ライオンが満面の笑みを浮かべて叫ぶ。 「治るのが早すぎる気がするが……まあ、いい薬草を塗っておいたからな。……生きてて……本当に良かった。ああ、平和な世の中が一番だ。だよな?」    ライオンはダンスに夢中で「ええ、そうですね」と面倒くさそうに言った。  クネクネするライオンを眺めながら、カメはウサギ軍団との死闘を思い出し、安堵とともに虚しさを感じた。  復讐に燃えるというのは、非常に心が痛む行為だった。  争いのない世の中がどれだけ尊いものかを、カメはじみじみと感じた。  二度と「平和な世の中め」なんて言うものかと誓いながら、カメはライオンと朝まで踊り明かした。  家の中に鳴り響くダンスミュージックのサウンドが徐々に小さくなり、目の前が真っ暗になった。  カメは現実に引き戻される。  
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