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吉原へ
浅草寺を後に見ては吉原大門を潜っての次郎左衛門にはこの世の物とは思えない殆どの煌びやかな場所に見えて居た。
仲見店の格子部屋に座りたる花魁を見ては次郎左衛門は全てが天女に見えていた殆どであった。
一件の仲見店の格子から次郎左衛門にスッと煙管が差し出された。
「主さん上がっておくれなぁ〜」
佐野では決して知らない良い匂いが次郎左衛門を桃源郷に誘っておる。
言われるままに次郎左衛門は登楼をした。
幅が広くまるで鏡の様に磨き掛かれた大廊下から惹きつけ部屋に案内をされた。
程なく遣手と花魁が次郎左衛門の通された部屋に来た。
花魁はすぐに次郎左衛門の横に座り撓垂れ掛けた。
花魁の化粧の匂いが次郎左衛門の鼻に興奮を与えて居た。
花魁はそんな次郎左衛門を見て悟ったのだ。
アレまぁこいつは田舎者だぇ!
花魁は席を外して遣手に言った。
「ありゃ田舎者だぇなぁ上手いことを言っては搾るだけ搾るのはどうだぇ?」
「そりゃいいことだぇどうせ田舎暮らしならば江戸には来れはせんぇ!」
遣手も薄苦笑いを浮かべて花魁に耳打ちをした。
「それにしてもあの面構え・・あゝ気色の悪いったらありゃしねぇ!」
部屋に戻って花魁が次郎左衛門に言った。
「旦那・・吉原には吉原の法と言う物がありんすぇ、初回から二度三度となりて顔馴染みにてからの床入りとなりんす!」
続けて花魁が次郎左衛門の耳元に宣う。
「ワッチは旦那が好みでありんす、どうか二度と三度と来て馴染みになっておくれなぁ!」
まだ初心な次郎左衛門には初めての女人からの艶言葉に天にも昇るくらいでいる。
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