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思いがけない
「旦那それは野暮ってもんだぇなぁ〜」
花魁の素っ気ない言葉に次郎左衛門は驚くことも忘れている。
「ワッチと夫婦になるなんざ天地がひっくり返りはとても無いわいなぁ・・ワッチと田舎者とって何を勘違いしていやがる!」
次郎左衛門は・・唖然として居た。
先ほどの天女の様な花魁とは違い眼は薄く口元は片方に上り薄笑いさえ浮かべておった。
その薄笑いを浮かべた口元から花魁がまた話し出した。
「テメェはその面構えを見た事あるのかいなぁ〜おお〜気色の悪い痘痕面、テメェなんぞに抱かれた日にはワッチの方こそ「瘡毒をはぁく」つてももんだぇ!」
「・・それは俺の銭が無くなったからなのかぁ?」
次郎左衛門が喉を搾る様に言った。
「あゝテメェの様な田舎者にはこの一月が極楽を味わえてよかっただろうてぇ江戸のそれも吉原の女子と同衾ってことで充分だぇ・・さぁさぁとっとと田舎に帰りやがれぇ!!」
口汚く罵る花魁の顔には悪鬼の如くに次郎左衛門は見えた!
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