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今日も今日とて、教室は朝からうるさい。 うるさい集団を横目に、勉強でもしようかとテキストを広げたところ『三津あまみ』がやってきた。 ふわふわの髪に、くりくりの眼。まるでうさぎを彷彿させる彼女は私の知己である。 「なっちーどうしたの?もしかして、きらきら王子たち気になる?」 「いや、うるさいなと思って」 「そりゃあね。だってあれだけイケメンだもん周りがほっとかないよ」 「そんなもんか」 「そういうもんです」 女子たちが騒いでいるのは、クラスの巨塔である2人組。 『柳瀬優斗』と『鮎川真』。この2人は学校で知らない人はいないであろう人気を誇っている。 「あまみは気になるのいないの?」 どちらかで。と言うと、梅干しでも食べたような酸っぱい顔をした。 「やめてよなっちー。わたしああいうタイプ苦手なんだから特にアイツ」 あまみが指したのは、『柳瀬優斗』。 高校1年生にしてとんでもない色気を放ち、その色気に耐えきれず倒れる女子は多し。 独特の関西弁?による巧みな言葉使いで惑わし、かなり女性遊びが激しいと言われていた。 そう、ついこないだまでは。 「えっ!あまみちゃんじゃん!!!!!いつ!?いつきたん〜!」 あまみに気づいた柳瀬が風のごとく、女子の波をかぎ分けやって来た。その間わずか10秒。 「なんやもう!来たなら声かけてちょうだいよ。このいけずぅ!」 柳瀬は、ツンツンとあまみのほっぺを触り口を尖らせる。 「ゲッキモ...」 可愛い見た目からは、想像できないトーンで言いながら梅干し顔をするあまみ。 「あまみ、もう諦めたら?」 親友に慰めるよう肩をポンと置くと 「クサイキモイクサイキモイクサイキモイ」 とロボットのような同じトーンで悪口を言い出した。 正直たまらなく怖い。でもこの見た目とのギャップにたまらなく萌えを感じる。推しができる気持ちってこんな感じなのかも。 わたしも柳瀬と同じで大概キモイや。 「息を吐くように悪口言わんといて!でもそこがええ!!」 やばいこいつも私と同じ思想じゃん。 なんかいやなんだけど。同じ人種とか。 「だから悪口は許したる!けどもう逃さへん」 仄暗い眼を写しあまみを後ろから、がっちりホールドする柳瀬。 すると「うびいィィィ!!!」とこの世のものではない声が聞こえた。 言わずもがなわたしの親友である。
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