3人が本棚に入れています
本棚に追加
佐々木君が両手を伸ばして私のほおに軽く触れた。
ーーーーー
佐々木君と立ったまま向き合い、なんでこんな状態になっているのか訳が分からず、固まりながら思う。
(…話あるし放課後待っててほしい…って、いつも何かとしゃべる佐々木君からお昼休みに言われて待ってたのに…。なんでほおを触わってるんや?佐々木君…話があったんちゃうの?)
ーーーーー
固まっている私を分かっていないのか?彼は私を見つめながら、両親指でわたしのまゆげを一撫でして「太い眉毛や…」と言った。
次に両親指で私の鼻の頭をちょんちょんと軽くつついて「毛穴が目立つ団子鼻や…」と言った。
そして、次に両親指で私の唇に軽く触れて「少し分厚い唇で、ちょっとカサカサかさついてるなぁ…」と言った。
固まりながら聴いていると、さっきから失礼なことばかり言う彼。
私は段々腹が立ってきて、きつめに彼に言った。
「ちょっと、ちょっと!カサカサかさついてるのはよけいな一言や~、佐々木君!…って、さっきから聴いてたら、むっっっちゃ失礼なことばっかり言って!話があるし放課後待ってて…って言われたし待ってたのに、なんで私の顔の品評会されなあかんの!」
抗議する私をスルーして、彼はマイペースに両手で私のほおを揉んだ。
「思った通り柔らかいなぁ…プニプニや…羽二重餅みたいや…」
と言ってから、顔を近づけて私の左ほおを唇で三回はむはむして、ぺろんと舐めて、ゆっくり離れていく彼の唇…彼の唾液でしっとりとした左ほお…更に固まった。
佐々木君は、私を見つめて言った。
「むっっっちゃ、柔らかかった…ほんまに食べられたらおいしやろうなぁ…」
今の彼の動作・言葉にタマシイを持っていかれ茫然。ちょっとヤバい今の彼に何を言ってもあかんと思った私。そして、更に体は固まる…。
ーーーーー
相変わらずマイペースな彼が、漸く私に話しだした。
「俺な、最近自分の事で発見したことがあんねん」
慌てて返事をする。
「は、発見?って、なんの?」
首をかしげると、彼はゆっくり、話し出す。
「んー…なんのって、吉野さんに対する発見…あんな、吉野さんの太い眉毛は、意志が強そうやけど困った時はハの字になって可愛いねん」
「かっ、かっ、かっ、可愛い…」
思わずのけ反る。
「毛穴が目立つ団子鼻は、愛嬌のあるイチゴみたいで可愛い」
「毛穴が目立つ団子鼻が、可愛い…イチゴ…」
次は、頭を抱える。
「少し分厚い唇は、弾力がありそうで、チュッってした時気持ち良さそう…カサカサかさついてる唇は、俺がチュッてして潤いさすから、プルンプルンになるし、安心して!」
「…チュッってしてプルンプルンって…そんなん安心できるか~~~い!」
思わす彼の背中を勢いよくパーでしばく。
「ごほっ、ごほっ…できる、できる!」
「………佐々木君、あんた、大丈夫か?」
心配になって、彼の頭を撫でてみる。
「ん?大丈夫って、なんの心配や?」
と、首をかしげる彼。
「なんのって…あんたの脳ミソの心配や~!」
思わず、叫んでしまった…。
「えっ?なんでそんな脳ミソの心配しなあかんのか、逆に聞きたいわ…俺は、いたって、通常運転や。通常運転に見えへんねんやったら、きっとそれは、吉野さんと二人きりやから」
真顔で何気にえらい内容を言った佐々木君。
聞いた私は自分で顔が赤くなるのが分かった。
そして次も、えらい内容を聞いてきた。
「あんな、吉野さん…俺のこと、異性として意識したことある?」
「えっ?!いっ、異性?!」
思わずイナバウアーをしそうになる位びっくりする内容で、即答した。
「ない、ない、ない!」
ついでに顔の前で車のワイパーのように腕を振る。
「えらいはっきりと…」
少し苦笑いをして、えーっと…ガツンと言ったら意識してもらえる?…とか、小声で独り言を言ってる模様の彼…あの、しっかり聴こえてますヨ、佐々木君。
「吉野さん、あんな、さっき自分の事で発見したことがあるって言ってたやんか?」
「うん、言ってましたね…」
「その発見、聞きたくない?」
「いや、別に聞かなくてもいいかなぁ…」
「もぅ、そんなつれへんこと言わんと、ここは聞きたいって言って貰わんと!」
「ええっ??」
「ええっ??って…いや、いや、話の流れから言って、聞きたい!…になるやん?なので、はい、どうぞ!」
(「なので、はい、どうぞ!」って…んー…なんか、聞いてほしいんかなぁ…そんな回りくどいことしんでも、佐々木君から言ったらいいのに…。あえて聞いてほしいんかなぁ…どうしよ…)
うーん…と、考えて次の一言を決めて、言った。
「では、その発見とやらを聞かせて下さい」
その一言を聞いた彼の嬉しそうな顔と言ったら…。やっぱり聞いてほしかったんや…と納得…。
佐々木君は、ニコニコと嬉しそうな表情で私を見つめて、話し始めた。
「吉野さんと喋ったらすごい弾むし楽しいし、異性と話してそんなん思ったことなくて、なんでやろ?って、思ってん。
結局考えても答えが見つからなくて、まぁ、いずれ分かるかって、考えるのいっぺん止めてん。
それから次に、吉野さんの顔の一つ一つが可愛く思えて、不思議で。…友達に『急に女の子の顔の一つ一つがが可愛く見えるようになってんけどなんでやろ?』って、相談してん。そしたら、『その子のこと好きになったんと違う?あばたもえくぼって、言うやん!』って。
それ聞いたら、あー、そっか…俺、吉野さんのこと好きなんやって、発見した…発見できた」
…と、一気に自分の思いを話して満足げな佐々木君と、聞いている間に段々顔が赤くなって、熟れ熟れになって下を向く私。
(あーっ!!熟れ熟れで、顔、めっちゃ暑い!)
熟れ熟れで顔の暑さを冷まそうと、顔を上げて両手で顔をパタパタと仰いでみる…けど、冷めへん!無駄な動作と分かっていても仰ぎ続ける。
仰いでる時に、ちらっと佐々木君の顔を見ると、バチッと視線が合う。急にどきどきしだす私の心臓。
どきどきが治まるように片手を心臓の上にもっていく。暫く待っても治まる様子がない。その様子を見て心配していると思われる彼の視線。
その視線が、私を突き抜けていきそう…彼の思いが私の中に沁みていきそう………。
(ん?あれっ?沁みて来た…?)
そうと思うと、彼に言ってみたくって、彼に声を掛けてみた。
「あの、佐々木君…」
「ん…吉野さん、心臓に手当ててるけど、大丈夫?」
そう言う彼の表情は、思った通りやっぱり心配そうで。
そんな彼に大丈夫…と動きで伝えたくて、慌てて心臓から手を離す。そして、言葉で「大丈夫」と彼に伝えると、安心してくれたことが分かった。
次に、言ってみたいと思ったことを彼に伝えてみる。
「あの、佐々木君の発見、教えてくれてありがとう。あの、…今の聞いて、私も、ちょっとだけ…ちょっとだけ、ちょっとだけ、自分で発見したことがあって…」
そう言うと、ん?何?と首をかしげる彼。
そんな彼を気にせずに話を続ける私。
「私が今発見したこと…それは…」
「それは?」
と、なぜか急に距離を縮めてくる彼。そんな彼から一歩後ずさると、彼は、苦笑い。
「えーっと、それは…」
と言いながら、後ずさる準備をする。
「それは?」
と苦笑いしながら言って…でも、彼は、距離は縮めてこず。
そんな彼を見て安心して、話の続きをする。
「それは…佐々木君の気持ちを知って、その気持ちが身体に沁みてきたと言うか、異性として意識し始めたことを発見してしまいました」
…そう言い終わった私の顔は、更に熟れ熟れになっていた。
話を聞いて、そんな私を見て、佐々木君は、凄く嬉しそうに笑っていた。
「意識し始めてくれたんや~!それって、凄い発見やん!吉野さん!!」
そう言って、嬉しそうに飛びついて来た佐々木君を、私は思わず飛び避けてしまった…。
最初のコメントを投稿しよう!