一話 病弱なフランシール

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一話 病弱なフランシール

 気が付いたら、実体のない体でフワフワと空中に浮いていた。下を見ると、自分の体がベッドに横たわり、娘が覆いかぶさって泣いている。  その横では、夫が突っ立って冷めた目で娘を見ていた。  私、死んじゃったんだ。私ことフランシーヌは、今全てを理解した。  私は、伯爵家の一人娘だった。子供の頃から体が弱くて、とても大切に育てられた。  食が細くて、頑張って食べないと体重がみるみるうちに減っていく。外に出ないので色白を通りこして真っ青。性格も内気で暗い。友達と呼べる人もいなくて、両親はとても心配していた。  でも当の本人は、あまり気にしていなかった。  だって人に興味がなかったし、体が弱くて何も続かない。やりたいことは沢山あったのに、チャレンジするとすぐに体調を崩すのだ。  そうなってくると、かなり早い年頃で諦めを知る。楽しくおしゃべりができる友達が作れない。だからなのか分からないが、私は人が見えないものが見えた。  最初は見ているだけだったが、試しに話しかけてみると、返事が返ってきてしゃべれることに気がついた。  生身の人間としゃべるよりも、気を遣う必要がなくとても楽だった。彼、もしくは彼女たちは、自分の死を受け入れることができずに現世に漂っている。  そうやって、そこかしこにいる幽霊達と話していると周りの人々から気味悪がられるようになってしまう。いつしか、幽霊令嬢と呼ばれるようになった。  いよいよ、両親達が心配して躍起になって婚約者を探し始めた。でも中々見つからない。それはそうだと思う。  自分でも、こんな暗くて幽霊とばかり話をする令嬢なんかと結婚したくないだろうと思った。  こんなに根暗で魅力の欠片もない私は、どうせ結婚できる訳がない。だから婚約者探しなんてする必要性を感じなかった。  ただ我が家には、子供が自分しかいない。だから私の代わりになる養子を貰って欲しかった。それを両親に言っても、不憫がられるだけで終わってしまう。  最後は必ず、自分達が必ず私を大切にしてくれる男性を見つけるからと宣言された。その度に、そんな奇特な人はいないだろうと心の中でつっこむ日々。  
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