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二話 死後の世界
「ここが天界?」
私は、ポツリと言葉を呟く。見渡す限り白い雲が広がっていた。ポツポツと自分のような実体を持たない人がいるのが見える。
「そうです。ここで一年程、魂の休息を行います。現世での疲れを癒したら、また新たに生まれ変わってもらいます。では、好きな事をして過ごして下さい」
そう言うと、イェルハイドはポンッと消えた。
私は、呆然としてしまう。突然、天界に連れてこられて魂の休息って言われても……。何をすればいいの? ポツンと一人、取り残されて途方に暮れた。
ぼんやりしていた私は、ふと自分の体の変化に気づく。手を見ると、細くて骸骨のような手が綺麗な女性の手になっていた。
服装も地味で暗いものではなくて、真っ白い綺麗なワンピースを着ている。髪に触れてみると、白髪に近かった薄い髪が、艶やかな金髪に変貌していた。
何か鏡のようなものはないかしら? そう思って周りをキョロキョロと見回した。
少し行った所に、小さな湖のような場所がある。そこに向かって歩き出す。足元には地面は無く、白い煙のようなものが漂っていた。
自分も実体がある訳ではないから、はたから見ると空中に漂っているようだろう。
湖に着き底を覗くと、若々しい女性の顔が映っていた。自分の顔に手を当ててみる。どうやら、湖に映っているのは私の顔のようだった。
「これって、私なの? もしかして、健康体だったらこんな女性だったってこと?」
自分でも驚くような美人だった。健康でさえいたら、違った人生だっただろうなと何だか無性に切なくなった。
そして私は、その場所で魂の休息をした。雲の上をフワフワと移動したり、他の亡き人にここでの過ごし方を聞いたりした。
それで知ったのだが、あちこちに点在している小さな湖に下界の様子が映るのだそう。試しに、私も娘の様子を見てみることにした。
「エレーヌの様子を見せて」
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