三話 フランシールの決意

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三話 フランシールの決意

 私は、それからもずっとエレーヌの事が心配で湖を覗いていた。エレーヌの様子を見ていると、段々と今まで感じたことがない怒りが沸いてくる。  生きている間、私はジョルジュに対してとても寛大な妻だったと思う。  ブルックス家の正当な当主は、私だった。だけど、当主としての仕事ができる訳でも、女主人としての仕事ができる訳でもなかった。  その為ジョルジュが、当主代行としてずっとブルックス家のことを取り仕切ってくれていた。女主人の仕事は、それ専用の女性を雇ってもいた。  ジョルジュに任せきりにしていた私は、何も口出しせずに好きなようにやらせていた。昔からいる執事に、お金を使い込み過ぎている気がしますと注意を受けても聞き流していた。私なんかを娶ってくれたからと、ずっと負い目を感じていたから。  でも、死んでからジョルジュの行いを客観的に見させられると、疑問に思うことが沢山ある。確かに我慢をさせて私と結婚したけれど、ジョルジュはそれ相応の対価は得ていた。  男爵家の三男で、本来だったら自分で何かをして生計を立てなければいけない身の上のはずだった。  私と結婚したからこそ、名のある伯爵家の当主として自分の好きなようにお金を使えた。  しかも愛人を抱え込み、子供まで作っていた。  私に対して誠実でいて欲しいなんておこがましいことは言わない。だけど、娘にだけは誠実であって欲しかった。蔑ろにして欲しくなかった。  娘さえ大切にしてくれたなら、ブルックス家のことも、愛人のことも、子供のことも、目をつぶっていたと思う。  だけど、ジョルジュは私の唯一の宝であるエレーヌを傷つけた。こんな光景を見させられて、黙っているなんてできない。私は、一つの決意を胸に抱いた。  
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