三話 フランシールの決意

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いつものように湖を覗いている時だった。突然、ポンッと音がしたかと思うとイェルハイドが現れた。 「フランシーヌ・ブルックス様、魂の休憩が終了いたしました。神様の所に向かいましょう」  私は、また突然のことで驚き目を見開いた。  この方っていつも突然なのね……。でも、漸くだわ。神様が私の言うことを聞いてくれるかわからないけど、でも言わなければ始まらない。 「わかりました。お願いします」  私は、イェルハイドが差し出した手を見る。きっとこの手を掴むと、またどこかに飛ばされるのだろうと思った。  私は、心の準備をしてからゆっくりとイェルハイドの手を掴んだ。  目を開けると、やはり見知らぬ場所だった。足元は同じように白い煙が漂っている。私が今いる場所よりも少し先に、大きな木がポツンと立っているのが見えた。  地面がないのに何で木が立っているんだろう? 木の根元を見ると、誰かが立っていた。 「あちらの方が神様です。フランシーヌ・ブルックス様、では新たな生へいってらっしゃい」  イェルハイドが、神様の方に手を向けて私を促す。私は、一つ頷いて神様の方に足を進めた。  神様は、私が来るのを待っていてくれた。神様のもとに辿り着くと声を掛けてきた。 「フランシーヌ・ブルックスだな。今世は、だいぶ大変な生だった。ゆっくり休めたか?」  神様が、私を労ってくれる。私は、神様をまじまじと見つめた。とても長い髪を、サイドに一つで編んでいた。紐を腰で結び、一枚の裾の長い衣を胸元で合せて着ていた。とても綺麗な顔だった。 「神様にお願いがあります」  私は、神様からの質問に答えることなく自分の要望を口にする。 「ん? 残念ながら私にも、次の生がどうなるかはわからないぞ?」  神様は、きっと私が次の生こそは、健康で幸せな人生を送りたいと願っているのだと思った。 「違います。私は、生まれ変わりたくありません。どうか、もう一度私のままで現世に戻らせて下さい」  私がそう言うと、神様は驚いたような顔をした。 「あんなに大変だったのに、戻ってどうするんだ? それにもう、体は完全に亡くなってしまったから、今更それは無理だよ」  私は、それでも諦めきれない。 「私の体でなくて結構です。だれか他の人の体に憑依したいのです。長い間でなくて構いません。どうかお願いします」  私は、必死になって神様に頭を下げた。神様は、考え込んでいる。 「湖で何か見たのか? できなくはないが、もう二度と生まれ変わる事はできないよ? それに、憑依のタイムリミットがきたら君の魂は完全に消失する。 それでもいいの?」  私は、躊躇うこと無くはっきりと返事をした。 「はい。構いません」  
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