青い目の白い猫

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私は、何もかも失った。 たった一人の友人だった親友の愛莉(あいり)を1ヶ月前に事故で亡くし。 親の借金で家を失い。 両親は私がバイト中に夜逃げして、忽然(こつぜん)と姿を消した——。 唯一残ったのが、所持金5,360円と1匹の猫だ。 「私も、お前も捨てられたんだ」 その日もいつも通りバイトから帰り「ただいま〜」と玄関を開けると「にゃ〜」と猫のイチが出迎えてくれた。 だけど、いつもと違う目の前の情景に唖然とした。 家の中にあった家電や家具がなくなっていて、部屋は(もぬけ)の殻になっていた。 一体何が起きたの!? 私はイチを抱きかかえて部屋を見渡してみると、物取りにでもあったみたいに服は箪笥から飛び出し、食器が床に割れて乱雑に散らかっていた。 そして、私は急いで自分の部屋に行くと、私の私物は残されていてベッドの上に「頑張って生きてくれ」と父の字で一言書かれた紙切れが置かれていた。 何なのそれ……。 私はそのメッセージを見つめたまま、しばらくその場から動くことができなかった。
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