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猫を拾ったところから家までは歩いて3分くらいの場所にある。
だけどこの子が雨に濡れてしまわないように大切に抱えながら歩いていたので、いつもよりも時間がかかってしまった。
もう少しで家に着くからね。そしたら温めてあげるからね。
我が家は二階建ての古いボロアパートだ。今にも壊れてしまいそうな階段を登り左端の角部屋が我が家だった。
こんなボロアパートでごめんね。
「ただいま〜」
そう玄関のドアを開けて家に入ると、いつものように両親二人がテレビを観ていた。
「おかえり」
テレビを見たまま声を揃えて二人は言った。
「あのさ〜帰り道に猫が捨てられてたんだよ。この子」
そう言って、私は自分の目の前に猫を掲げて両親に見せた。
「そうなの〜」
だが二人は背中を向けたままこちらを見もしない。関心がないみたい。
「可哀想だから飼いたいんだけど、いいよね?」
母は「唯がちゃんと面倒見るなら」と言った。
そして、父は「餌は自分の金で買うんだぞ」といつものようにお金の事を言っている。
「はいはい、分かったよ」
私は呆れたように返事をして自分の部屋に戻った。
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