第25話

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「おのれ……。  シグルズの婚約者がまた立ち塞がるか」  空気を震わせ、口許から黒炎を零しながらシグムンドが恨み節を言う。 「どういう意味?」  私は、黒竜と対峙したまま問い返す。 「シグルズの元婚約者は、我が力、恨みを力に変える術の存在にいち早く気づいたのだ。  あやつは、我の邪魔をしようとした。  ……だから、殺した」  シグルズ様の元婚約者は、アンダンテ家の呪いによって命を落としたのではなく、シグムンドが殺害した? 「お前も、同じ運命に遭わせてやろう。  竜に覚醒したところで、闇の力には抗えぬ」 「貴方は、許さない」  竜の爪、牙、尻尾、連続的に攻撃を放ち、黒竜に命中させる。 「ぬっ……。これしきの打撃など効かぬ」  ……倒しきれない。  有効な損傷を与えられていない。  呪いの力は、シグルズ様が抑え込んでいる。  街に大きな被害は出ていない。  公爵領の領民を殺害して呪いの力を強大にするシグムンドの計算は崩れている。  それでも彼は強い闇を纏う。蓄積した呪いが強すぎるのか。他にあるとすれば……。 〈お嬢様、ケモノ姫。  ダリル・アンダンテを見つけました!  街の北東部に潜み、怪しげな魔法陣から闇の力を送っていると思われます〉  ダリル・アンダンテ。  私が大樹から覚醒したとき、シグムンドとともにいた闇の術式使い。  〈奴か。ダリルが闇の力を増幅させている。おそらく人間の生贄もいるじゃろう〉  北東部ね。 〈駄目じゃ。我が行く。  お姉ちゃんは、シグムンドに集中するのじゃ〉    大丈夫? パンナガ?  貴女、かなり力を使っているけれど……。 〈もとより命を賭した戦いじゃ。  我とアムリタは、ダリルと浅からぬ因縁がある。我とアムリタで必ず潰すから、闇の力が途絶えた瞬間を見逃すな〉  わかった。必ず倒すね。 〈うむ、悪くない〉
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