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あっという間に3ヶ月が過ぎた。
王国西方を領土とする四大公爵の一角、シグムンド・アンダンテによる王都転覆に向けた策動と領民の大量殺戮未遂は、王国中を揺るがす大事件となり、アンダンテ家は失脚した。
私もシグルズ様ももう、公爵家の人間ではなくなった。そう思っていたけれど……。
「お嬢様、全くエレガントでありません。
もう竜である必要はないのですから、人間の令嬢としての振る舞いを習得してください」
「坊ちゃま、スピーチ中に紅茶を飲むわけにはいきませんよ。緊張に慣れてくださらないと」
私達は、復権したフィルロード公爵家の一員として、私とシグルズ様の、やり直し結婚披露パーティー準備に大わらわだ。
マナー教育や歴史教育、スピーチの練習が続き、私もシグルズ様も疲弊していた。
「逃げましょう」
「逃げますか」
私は、シグルズ様と同意すると、
「竜の翼(ドラゴン・ウイング)!
背中に乗ってください、シグルズ様」
私は、シグルズ様を乗せて公爵邸の庭から飛び立った。
次の瞬間、背中にちくりとする痛みが走る。
えっ……?
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