2061年

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2061年

 いつしか、また75年という時間が過ぎた。  2061年7月。  蒼子と紅子は、再びあの茶畑に立っていた。少女のままの姿で。ふんわり広がるひざ丈の揃いのワンピースを着て、手を繋いで夜空を眺めた。 「うわあ、よく見えるね。」  紅子がはしゃいだ声を出し、 「ほんとだね。」  と蒼子が答えた。  ハレー彗星は夜空を横切るように、長い尾を伸ばし、それはそれは美しかった。  そのとき、強い風が吹いた。ロールケーキの茶畑に、強いさざ波が立ち、ちぎれた茶の葉がふたりに吹き付けた。蒼子は思わず、腕で目を覆った。  風が止んだとき、紅子が言った。 「お姉ちゃん、間に合わなかったんだね。」  紅子の瞳は濡れて光っていた。 「うん……。ごめん……。」  いつだったのか思い出せないが、蒼子の命はすでに尽きていた。
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