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親子
さくらは、大和の部屋でトイレを借りた時に、弥生と拓海にメールをしていた。
『茜さんと3人で帰ります』
と、一言だけ送った。
茜がいる理由を問いただすこと無く、弥生からは、
『…わかったわ』
と、そして拓海からは、
『ありがとう』
と、返事が返ってきていた。
さくらは、その返事を見て、
『ホントは皆、会いたかったんだ…』
そう確信した。
家に帰る車の中は、大和も茜もすごく静かだった。
さくらは、茜と一緒に後ろの席に並んで座り、不安そうな茜の手を握りしめていた。
時折、困ったような微笑みをする茜に、
「大丈夫です。ふたりとも茜さんを待ってます」
そう言って、さくらは微笑んだ。
石田家に着いた。
車から、ゆっくりと茜が降りて、家を見上げた。
さくらが、その茜の横顔を見つめていると、茜の頬を涙が零れた。
しばらく、大和とさくらは静かに茜を見つめた。
そして…、
「うん、…行くわ」
そう言葉にして、茜が玄関のドアを開けた。
大和の車の音で着いたことに気づいていた弥生と拓海は、玄関の中で待っていた。
弥生は、涙を堪えながら微笑んで、
「…おかえり」
そう茜に声をかけると、茜は、
「ごめんなさい…、ごめんなさい」
そう言って、顔を手で覆いながら泣き出した。
茜の一番近くにいたさくらが、泣いている茜の背中をさする。
弥生が近づき、そっと茜を抱きしめた。
「私も…ごめんなさい」
そう茜にささやくと、ただ静かに抱きしめた。
さくらは、茜と弥生からは一歩離れた。
そんなさくらの手を、大和が握りしめた。
さくらが大和を見つめる。
大和は、泣きそうな顔をしながら、
「ありがとう…」
小さな声で、さくらにそっと声をかけた。
さくらは微笑んだ後、また茜と弥生を見つめていた。
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