茜という人

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茜という人

『明日って、俺のアパート来れる?』  突然の大和からのお誘い。  安定期に入った大きなお腹。  順調に元気に過ごしていたため、 「分かった」  そう返事をした。  二度目の大和の部屋。  あの時は、女の子の形跡を探していた。  そう思うと胸が痛くなる。 『やっぱり、怖いのかな…』  信じることがこんなに怖いなんて、思わなかった。  弥生ママに、 「大和と会ってくるね」 と声をかけると、二人で外で会うことに驚きながらも、笑顔で送り出してくれた。  大和の部屋の前。  緊張して、インターホンをなかなか押せなかった。  すると、 「あら、うちに用?」 と、声が聞こえた。  ふと横を見ると、背が高くて髪の長いキレイな女性が立っていた。 「大和に用かな?起きてるかな…、ちょっと待っててね」 そう言いながら、チャイムを鳴らそうとするその女性に、 「いえ、また来ます!」 と返事を返してその場を去った。  近くの公園。  さくらはベンチに座って悩んでいた。  大和から何度も電話が着ているけれど、出れない。  きっと言い訳される。  私はそれを信じられるのだろうか…  途方にくれていると…  「さくらぁ〜!」 と、大和が叫びながら走ってくる姿が見えた。  思わず立ち上がり逃げようとしてしまう。  でも、このお腹で走るのは無理だ。  諦めて、大和がそばに来るのを待った。  そばに来た大和は、さくらを抱きしめた。 「違う!違うんだ!あの人は、さくらに会わせたかった人なんだ!」 そう言って、大和はさくらを更に強く抱きしめた。 「部屋に、戻ってくれる…?」 不安げな大和を見て、さくらも静かに頷いた。  アパートまで、無言の二人。  けれども、大和はさくらの手を強く握りしめて離さなかった。  その大和の手は震えていて、さくらを失いたくない想いが溢れ出ていた。  さくらは、繋がれた手を見つめながら、 「大和は、本当に私を思っているのかも…」 そう思う気持ちが強くなっていた。
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