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大和の思い
玄関を飛び出して、部屋の前の柵を手で握りしめ、その手に頭をつけた。
ふと、
『姉ちゃんに、さくらを会わせたい…』
そう思ったんだ。
大切な人を愛するために、家族から離れた姉ちゃん。
出ていってから、会っていなかった姉ちゃん。
連絡先も、変わっている気がして怖かった。
繋がった電話も、知らない人が出たんじゃないかとドキドキした。
『会える…』
そう思ったら、少し怖くなった。
何を話せばいいんだろう…と。
心細かった俺は、さくらに会わせたいと言いながらも、ホントは姉ちゃんと二人で会うのが怖かったのだと思った。
会いたかった人。
一人で抱えていた不安を目の当たりにして、
『何でもっと早く会おうとしなかったんだ、俺は…』
悔しさが込み上げてくる。
本当なら、俺が両親と姉ちゃんの間でうまく行動を起こしてれば、違ったはずだ。
『くそ!』
乱暴な言葉が声に出てしまう。
その時、玄関が開いた。
姉ちゃんだ。
『…ごめんね』
泣きながら謝る姉ちゃんの顔が、まともに見れなかった。
さくらがそっと近づいて、姉ちゃんの手を握った。
そして、俺を見て、
「皆で帰ろう」
そう言葉にした。
俺は、その言葉の意味が理解できなかった。
『無理だろ』
その言葉が頭を過る。
さくらが、
「大丈夫」
そう言って優しく微笑むと、なぜか大丈夫なのだと思えた。
…今まで、親に一度も聞いたことがなかった。
『姉ちゃん、どうしてるかな…』
と。
そんなことも頭を過っていた。
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