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記憶…
思い返せば…、なんであーなったのか…。
さくらは、昨日のことを思い出していた。
いつもと同じ雰囲気。いつもと同じ仲間。
一つ違うのは、いつもと違う部屋。
いつもは健太の少し広めのワンルームの部屋。
皆が寝転がれるように、大きなふかふかのラグの上にはクッションがいくつも置いてあって、皆が好きなようにゴロゴロしながら寝ていた。
今回は、行ったことの無い大和の部屋に行きたいと、詩織から何年も何度もお願いされていた大和が、渋々了承して大和の部屋に決まった。
大和の部屋は、健太の部屋とは異なり、キッチンが別にある6畳ほどのリビングと、そのリビングと引き戸で仕切られた寝室があった。
リビングの床には、さくら達が来るために急遽買ったと思われる座布団らしきクッションが数枚と、大和の定位置の一人掛けの椅子が1つ置かれた部屋だった。
健太と大介は、何回か来たことのある大和の部屋。
女子メンバーは、初めて入る大和の部屋に、女の子の物が置かれてないかと、形跡を探して楽しんだ。
大和の部屋は、皆で泊まれないので、今日は帰ろうという話になって、皆で解散した。
帰る道中、携帯電話を大和の部屋に忘れたことに気付いたさくらは、元来た道を戻り、大和の部屋へと向かった。
部屋に着くと、玄関の鍵が空いていて、部屋に入ると床で大和が寝ていた。
そんな大和を見かねたさくらは、
「ちょっと!ベッドに行きなよ」
と言いながら、軽く大和の肩を叩いた。
「ん…」
と、寝返りをうつ大和に、さくらはため息をついた。
大和の部屋は、健太の部屋と違って、床に何も敷いてない。
これでは、床の冷たさで体を壊しそうだ。
悩んだ挙げ句、さくらはベッドに運ぼうと決めた。
「起きて!ベッド行くよ!」
そうさくらが声をかけると、少し目を開けて大和がさくらをみた。
「おお!さくらか!サンキュ!」
と、少し笑って体を起こして、さくらが支えながらベッドへと向かった。
ベッドに倒れるように横になる大和を、さくらは思わずじっと見つめた。
かがんで間近で大和を見つめる。
近くで大和の顔を見たことが無かった気がした。
『キレイな顔だなぁ…』
そうさくらが思っていると、大和の目が開いた。
見つめ合う二人。
15年も一緒にいたけど、二人きりでこんな至近距離で見つめ合ったことはなかった。
ちょっと恥ずかしくなったさくらは、目をそらし、
「じゃあ、帰るね」
そう言ってベッドのそばから離れようとした。
そんなさくらの手を大和が掴む。
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