お祖母ちゃん

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お祖母ちゃん

 さくらがお祖母ちゃんの家で住むようになって2ヶ月。  お腹はまだ大きくはない。  つわりもあまりないけれど、貧血気味と言われて薬を処方してもらっている。  さくらの両親は、さくらが小さい頃に離婚をしていた。  父親は、その後すぐに再婚をして新しい家族と幸せに暮らしているらしい。  だから、父親とは全く会っていない。  父親の親族にも。  母親は、一人でさくらを育ててくれていたけれど、中学の時に病気で亡くなっていた。  その後、母方の祖父母に引き取られて、高校卒業まで一緒に暮らしていた。  お祖父ちゃんは、少し前に亡くなっていて、今はお祖母ちゃんが一人で暮らしている。  さくらは、時折お祖母ちゃんの様子を見に来てはいた。  けれど、こんな風に助けてもらうことになるとは、思いもよらなかった。  お祖母ちゃんの家から遠かった仕事も、迷った挙げ句辞めてしまったから、子供が産まれたら、すぐに仕事も探さないといけない…。  不安しか無い未来だけれど、お祖母ちゃんの存在は心強かった。  私分増えた生活費は、お祖母ちゃんが年金生活なのに賄ってくれていた。  申し訳なくなるさくらに、 「さくらと一緒に暮らせる事が、幸せなんだよ」 と、お祖母ちゃんは笑ってくれた。  さくらは、 『お祖母ちゃん孝行しなきゃな』 と、これから先もずっとお祖母ちゃんと暮らそうと心に決めていた。  さくらがお祖母ちゃん家に住むようになって、最初のうちは順調だった。  けれど、少しずつ具合が悪くなるお祖母ちゃんの姿は、さくらを不安にさせた。  そして、かかりつけの先生と話して、お祖母ちゃんは少し入院をすることになった。  病院の手続き、保険手続き、役所への手続き、慣れない手続きばかりで、頼れる人のいないさくらは、一人で必死だった。  役所での手続きを終えて外に出ると、頭がクラクラした。  軽く頭を抑えながら、 『あっ、薬局にもいかないと…』 と、自分の貧血の薬を取りに行くことを忘れていた事を思い出した。  前を向き、薬局の方へ顔を向けると、立っているのが辛くなるほど頭がクラクラした。  しゃがみ込み立ち上がれないさくら。 「大丈夫…?」  優しく声をかけてくれる女性がいた。  その女性は、さくらの腕に触れ、自分の時計を見つめる。  脈を見てくれているようだった。  そして、その女性は電話をかけた。 「救急車の手配をお願いします」  その女性の一言に、さくらはホッとしたのか、そのまま気を失ってしまった。
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