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「それでも不貞行為に及んだのは事実なので責任はあると思います。彼女が指輪してないのを見ただけで勝手に判断したのもこっちなので」
矢乃の言葉に、胸につかえていた何かが取れたような気持ちになった。
「それに冴島さん……えっと秀真さんに嫌な思いをさせたのも事実なので」
テーブルの端に置いた冴島の名刺を確認してから、矢乃は名前を呼んだ。
わざわざ名前で言い直したのは妻と混同しないためとわかっているのに、不意打ちにドキっとした。
まっすぐにこちらを見てくる瞳に、冴島は今日自分がなんのためにここへやって来たのかを思い出す。
「あなたに関する交際報道は、ここ最近は特に多いようですね。お相手も以前は共演者ばかりだったのが、その場で出会った一般の方との記事が目立ちます」
矢乃の眉尻の辺りがぴくりと動いた。
「よくお調べになりましたね。まあちょっとネット見たら過去記事は吐くほど落ちてますけど」
自虐まじりに呟いた矢乃の表情からは、純粋な驚きと戸惑いが見てとれる。
というか、こんな話まで持ち出す必要あります?
次の瞬間に矢乃の口からそんな言葉が出てくることを恐れた。
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