月夜の遭遇 あなたの声

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満月・・。 当たり前のように毎晩出ては沈む月をこんなにまじまじと見つめることなんて、子供の頃でもなかった。 月だけじゃない、頬に少し当たる風や月の光がなかったら歩くことも出来ないだろう漆黒の暗闇や、ごつごつした大木の根っこも、この静寂だからこそ感じている。 この世に未練などもうないと思っていた。 それなのに、運動靴にウインドブレーカーを羽織り、小さなリュックにはペットボトルやカロリーメイト、そしていまスマホを握っている。 どうみても、山歩きくらいは出来る身なりだった。ただ、側にに転がっている薬の瓶と散らばっている錠剤だけが少し違和感があるくらいで。 どのみち、いまのわたしの生活はどのコースに進もうとあがいてみてもブブッ!というクイズの不正解音とともに行き止まりにぶつかるような日々だった。やることなすことすべて裏目に出る、生きてりゃたまにはそんな事もあるよというレベルじゃなく、生まれた時からそんな事しかないと決められていたみたいに上手くいかない人生に疲れ果ててしまったから、もういいっかって車ぶっ飛ばしてここに踏み込んだ。 この森に入ったら二度と出てこられない、そう聞いていたから。 でも、もうどこにも行かなくていいのに、道なき道を歩くわたしは、闇の中を迷ったように彷徨って、ただ覆い被さるような樹々しかないだけの風景になにを見つけようとしているのか、スマホをかざしてずっと森を歩いた。 「あり得ないけど・・、わたし出口を探してる? でも、その出口って自分から捨てたんだよね」 必要なのは入口だけだったはず。 
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