1話

1/1
前へ
/6ページ
次へ

1話

 リベール・ウオッカ公爵令嬢は今日も悩んでいた。  婚約者のエアロ・ジントニック公爵令息が浮気していると噂があるからだ。相手はレア・ジンジャー子爵令嬢だった。 「……リベール様、またジントニック様はジンジャー子爵令嬢と一緒にいますね」 「そうね」 「節操がないですわねぇ」  そう言って、眉を潜めたのはウオッカ公爵令嬢もとい、リベールの親友のロエラ・コーク伯爵令嬢だ。リベール達は王立学園に通っている。学年はリベールやロエラ、ジンジャー子爵令嬢が2年生、エアロは3年生だ。年齢もリベール達の3人は17歳、エアロも18歳になっていた。 「仕方ないわ、ロエラ様。行きましょう」 「ええ、そうしましょうか」  2人は苦笑いしながら、エアロとジンジャー子爵令嬢がいる中庭から学舎内に戻った。  リベールは1人で廊下を歩いていた。この場には、親友のロエラはいない。  リベールは足音をあまり、立てずに静かに進む。それもそのはず、現在は夕方だった。 (ふう、疲れた。もう、あのバカエアロとは婚約を解消したい)  ムカムカしながらもリベールは玄関口へと向かう。一応、公爵令嬢だから馬車で学園まで通っている。車宿りまで急いだ。  車宿りに着いたら、御者に声をかけた。 「あ、お嬢様。用意を今からしますね」 「頼むわ」  そう言ったら、御者は頷く。てきぱきと彼が準備をする中、リベールは待った。しばらくして、馬車の用意ができたと知らせてくる。扉を開けてもらい、乗り込んだ。  やっと、屋敷に帰れる。ほっとしながら、リベールは肩から力を抜く。馬車や屋敷くらいだ、寛げるのは。彼女には気を抜ける場所がなかなかない。  親友のロエラの前か、気心知れたメイドの前くらいか。リベールは襟元のリボンを緩めながら、窓の景色を眺めた。馬車がゆっくりと動き出したのだった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加