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「ミナコがあんな危ないことをする必要はないのよ」
怪異を取り込んだ事実はともかくとして、怪異を倒した時ミナコもその場にいた、ということはミズキにも伝わっていた。
それすら隠せば、あまりにも嘘となってしまう。過剰な嘘がほころびを生む、ということはミナコにもわかった。
「お姉ちゃんたちがいるんだから。ねえ、ミナコ?」
その日の夜遅く。布団を敷いて、眠らんとしている時のことである。
ミズキは、ミナコが皆のため戦う気になったのだと、そう信じているらしかった。あの晩、皆が苦戦しているのを見て、そのつもりになったのだと。
両手を握って、訴えかけるような目を向けるミズキを見れば、心配してくれているということはミナコにも理解できた。
その両手の、そっと優しげなぬくもり。
善意なのだ。姉としての好意。それはミナコにも感じ取れただろう。
しかし、である。
「でも …… お姉ちゃんは、私と同じ頃から戦っていたよ」
怪異が生じたのは、今から二年半ほど前のこと。ミズキが中学に上がって間もない頃の出来事であった。
「それは …… 他にいなかったんだもの。けど、今は私たちがいる。先輩だっている。ミナコはやらなくっていいの」
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