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越ミナコには、他人のことが非常によく見える。それでいて、自分がなぜこのようにして、内に閉じこもってしまっているのか ―― それが理解できないでいた。
理屈としては、彼女にだってわかっている。
辛い経験をしてきた、という事実はあった。学校が嫌だ、という言い方もできる。人を嫌がっている、世を嫌っている、という気持ちも嘘ではない。自分の能力が他人に不幸をもたらしていただろう、と気付いた時には、ミナコとて絶望に似た気持ちにもなった。
ならば、理由はそのうちの一つか。それとも、それら全てであろうか。あるいは、いつか瀬戸家スイが口にした通り「理由なんて考えたぶんだけ出てくる」のかもしれない。
いずれにしても、ミナコには自分自身がわからない。
だからこそ、心のどこかで姉を疎んじていながらも、その柔らかい身体でそっと抱きしめられると、ミナコの心は他人の感触にくすぐったさを覚えるのだ。
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