3-02 判然としないボク

7/7
前へ
/76ページ
次へ
 (こし)ミナコには、他人のことが非常によく見える。それでいて、自分がなぜこのようにして、内に閉じこもってしまっているのか ―― それが理解できないでいた。  理屈としては、彼女にだってわかっている。  辛い経験をしてきた、という事実はあった。学校が嫌だ、という言い方もできる。人を嫌がっている、世を嫌っている、という気持ちも嘘ではない。自分の能力が他人に不幸をもたらしていただろう、と気付いた時には、ミナコとて絶望に似た気持ちにもなった。  ならば、理由はそのうちの一つか。それとも、それら全てであろうか。あるいは、いつか瀬戸家(せとや)スイが口にした通り「理由なんて考えたぶんだけ出てくる」のかもしれない。  いずれにしても、ミナコには自分自身がわからない。  だからこそ、心のどこかで姉を(うと)んじていながらも、その柔らかい身体でそっと抱きしめられると、ミナコの心は他人の感触にくすぐったさを覚えるのだ。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加